令和7年度 土木学会 全国大会 第80回年次学術講演会
湿潤面用粘着テープを用いたコンクリート保水養生の施工
日時:2025年9月12日(金)
会場:熊本城ホール 3階 A2会議室
市村周二 清水建設株式会社 正会員御領園悠司 清水建設株式会社 フェロー会員前田敏也
1.はじめに
コンクリートが所要の強度、耐久性、ひび割れ抵抗性等の性能を発揮するには、初期材齢において適切な養生を行うことが重要であり、打込み後一定期間、適切な温度および湿度に保つ必要がある。近年、養生方法は多様化しており、特に粘着シートを用いた湿潤養生は施工が容易なことに加え、施工後の給水が不要なこと、型枠存置からシート養生へ切り替えることにより型枠転用期間の短縮が見込めること等の理由で注目されている。しかし、脱型直後のコンクリートは湿潤状態であり、従来の粘着シートでは指触で水分の移行がない状態まで貼付することができないといった課題がある。
このような課題を解決するため、筆者らは湿潤状態においてもコンクリートに貼付可能な特殊粘着剤を採用した粘着テープを開発し、ポリエチレンフィルムシートと組み合わせたロールマスカーを作製した。本報では開発した粘着テープおよび作製したロールマスカーを用いた養生の施工事例を報告する。
2.粘着テープおよびロールマスカーの概要
開発した粘着テープは、支持体のポリエチレンクロスにアクリル系の特殊粘着剤を塗布したものであり、幅50mm、厚さ0.175mm である。アクリル系の特殊粘着剤がコンクリート表面と粘着剤との界面に存在する余分な水分を吸収することで粘着力を発現する。ロールマスカーは同テープと、幅580mm、厚さ0.05mmの二つ折りされたポリエチレンフィルムシートを貼り合わせたものである(写真-1、2)。
3.施工概要
対象は壁高欄部に打設した壁状のコンクリートであり、施工時期は7月、型枠存置期間は7日間である。施工の流れを図-1に、施工状況を写真-3~8にそれぞれ示す。粘着テープおよびロールマスカーの設置は、プラスティック製コーン(ピーコン)穴の充塡処理後に行った。養生では、より高い湿潤状態の維持を目的とするため、養生前に噴霧器を用いてコンクリート表面に散水するとともに、ロールマスカーはコンクリートを覆うように上面および側面に設置し、設置後はポリエチレンフィルムシートとコンクリートとの間に隙間が生じないように粘着テープを用いて固定を行った。養生期間は7日間であり、養生期間中に追加の給水は行わなかった。保水状態の確認は、脱型後、散水後、養生材撤去後にモルタル水分計(株式会社サンコウ電子研究所PM-101)を用いてコンクリート表面の含水率を測定することにより行った。
4.施工結果および考察
(1)養生効果
脱型後、散水後、養生材撤去後の含水率の測定結果を表-1に示す。これまでの知見から、含水率4%以下であれば乾燥状態、5%以上であれば湿潤状態と概ね判定できると考えられる。なお、含水率15%以上は測定の上限である。測定結果から、脱型後の含水率は水分の逸散により4%を下回る乾燥状態が部分的に見られたが、散水後の含水率は15%以上を示し、十分な湿潤状態であると判断できた。一方、養生材撤去直後のコンクリート面は目視によると湿潤状態を保っており、含水率は場所によりばらつきがあるものの、いずれも5%以上の湿潤状態であり、15%以上の高い含水率を示している箇所もあった。含水率のばらつきには、コンクリートの表層品質や上面・側面等の向き、散水量の違いや環境温度・湿度、風や日射等が影響していると考えられるが、全体的に脱型後よりも含水率が高く、多くの箇所で含水率15%以上を示していたことから、散水後の湿潤状態を維持していると考えられる。
| 脱型後 | 散水後 | 7日養生後 | |
|---|---|---|---|
| 含水率 | 3.7~10.3% | 15%以上 | 5.0~12.8% , 15%以上 |
(2)作業性
散水後のコンクリートの湿潤面においても、開発した粘着テープは粘着力を発現し、テープの浮きや剥がれ等は発生せず、乾燥面と同等の作業性を有していることを確認した。また、養生7日後も浮きや剥がれ等が見られなかったことから、粘着テープによってポリエチレンフィルムシートとコンクリートとの密閉空間が維持できたために高い含水率が保持できたものと考えられる。さらに、養生材の撤去作業においても、一般的な粘着テープと同程度の剥離強度であり、著しく作業性を損なうものではなかった。なお、養生材撤去後、コンクリート表面に粘着剤の残留や汚染等も確認されず、外観に及ぼす影響はないと考えられる。
5.おわりに
開発した粘着テープおよびロールマスカーを活用することにより、含水率が高い湿潤状態のコンクリートに対し、簡便な作業によって効果的な湿潤養生が可能であることが確認できた。今後は養生後のコンクリートの表層品質や耐久性に関する品質確認を行うとともに、既存技術との比較や含水率のばらつき、長期的な外観変化等についても検討を行う予定である。