どちらも透明なテープですが、
環境面、使いやすさに
大きな差があります。
「セロテープ®」は発売70周年を迎えたロングセラー商品です。GHQから透明なテープを作ってほしいという要請を受けたのが始まりで、当時はプラスチックフィルムがなかったためセロハンを用いて製作しました。その後市販していくのですが、当時はものを貼るのに粘着テープを使う習慣がなかったため、透明のテープの使い方を普及していったという歴史があります。私自身も子どものころから、テープといえば「セロテープ®」というなじみがあり、そのような歴史を脈々と続けてきていると言えます。
「セロテープ®」を作るための主な原料は「天然素材」です。セロハンは、再生可能な植物資源である樹木(木材パルプ)を原料とした、天然素材のフィルムです。粘着剤の主原料には天然ゴムや天然樹脂を、巻心には再生紙を使用するなど、ここ数十年で問題になっている環境への配慮をずっと行っています。「セロテープ®」は、1948年の発売当初から一貫して植物性の原料を使用しています。OPPテープとは、ポリプロピレンフィルムに主にアクリル系粘着剤を塗布したテープのことですが、昨今はOPPテープの方が圧倒的に安価で、機能も向上しています。手切れの良さや粘着性の高さなど、「セロテープ®」ならではの良さがあったのですが、プラスチックテープとの競合が激しくなっています。
今後の経営のためにOPPテープに転換しても良いのでは、という議論もありました。しかしそこに手を出すと環境に配慮したエコ製品である「セロテープ®」の価値が失われる、自分で自分の首を絞めることになる、という考えのもと、天然素材の使用を貫いてきました。
2018年ニチバンは100周年を迎え、その際に企業理念をもう一度見直しました。その際に、行動指針として5つあげる中で「社会」を一つ目にもってきたのは、「社会」を将来に向かって大事にしなければ、今後生き残っていけないだろうという考えがあってのことだと理解しています。また基本理念についても、日絆工業という元の社名にも含まれる「絆」という言葉を追加し、「私たちは絆を大切に ニチバングループにかかわる すべての人々の幸せを実現します」と改めました。今後はより一層この「絆」を大切に、皆様により良い生活を提供できればと考えています。改めて「セロテープ®」の影響力の大きさを感じ、さらに環境に配慮したものを作っていかなければならないと社内でも再認識しました。「セロテープ®」は他のプラスチック製のテープとは違う、ということは胸を張って言えることだと思います。
商品の社会性のアピールについては、さらに効果的なものがあるのではないかと考えています。「セロテープ®」の存在自体は知られていますが、天然素材であることは残念ながらあまり知られていません。環境配慮製品であることや高い品質であることをより一層知っていただくために伝えていきたいです。「セロテープ®」は2018年に発売70周年を迎えました。これからは“SDGs(持続可能な開発目標)”を製品の中心に据え、さらに環境配慮に向けた進化版を作っていくことも検討しています。