平成28年度 土木学会 全国大会 第71回年次学術講演会
注入状況の確認が可能なひび割れ注入シールテープの開発
日時:2017年9月9日(金)
会場:東北大学川内北キャンパス C棟C307教室
1.はじめに
経年劣化や、施工時における収縮等によって生じるコンクリートのひび割れに対する補修方法として、低粘度の樹脂等を圧力をかけて注入する、ひび割れ注入工法が一般的に行われている。注入工法では、注入材の漏えいを防ぐ目的でひび割れ表面にシール材を塗布するが、シール材の養生や撤去に時間を要することや、注入状況の確認ができないといった課題がある。
このような課題を解決するため、養生時間が短くて注入状況が確認でき、撤去が容易なひび割れ注入用のシールテープを開発した。本報では、開発の過程で実施した試験および現場での施工について報告する。.
2.シールテープの概要
シールテープは、PETフィルムの基材にゴム系粘着剤を塗布した厚さ0.225mmの粘着テープであり、注入状況が確認できるように薄い青色を呈した半透明としている。シールテープの幅は60mmで、剥離紙を有する1巻き20mのロール状になっている。
写真-1、2にシールテープおよび注入状況を示す。施工時には剥離紙を剥がしてひび割れ表面にシールテープを貼付する。貼付後、30分〜1時間程度で注入圧に耐え得る粘着力に達する。これにより、従来はシール材の塗布から注入までの養生が1日必要であったのに対し、シールテープを貼付した日のうちに注入が可能となり、工期が1日短縮できるという特長がある。
3.粘着力測定
粘着力の測定結果を表-1に示す。
表には、比較のため一般的なシール材の結果も併記する。粘着力は、JIS R 5201 に準じた研磨モルタルパネルにシールテープを貼付し、所定の時間経過後、JIS Z 0237に準じてモルタルパネルに対して90°の方向になるように引っ張り、シールテープが剥がれる時の荷重を測定した(図-1)。
これらの結果から、シールテープの粘着力は一般的なシール材と比べて同等以上であり、貼付後30分~1時間程度で十分な強度に達した。また、低温時に粘着力は若干低下するが、シール材と同等以上の強度を維持している。なお、注入試験によって、シールテープが0.1N/mm2程度の注入圧に対して注入材の漏れが無いことを確認している1)。
| 貼付後の 経過時間 | シールテープ (23℃) | シールテープ (5℃) | シール材 (23℃) |
|---|---|---|---|
| 30 分~1 時間 | 10.0 | 8.8 | 未硬化 |
| 24 時間 | 11.3 | 16.6 | 7.1 |
(単位:N/10mm)
4.施工
シールテープを用いた注入工法の施工の流れを図-2および写真-3に示す。ここで、シールテープ貼付前の清掃および貼付後の注入は従来工法と同じであるため、それ以外の工程について以下に示す。
写真-3 施工の流れ
(1)シールテープ貼付
シールテープをひび割れに沿って、シワや気泡が発生しないように強く圧着しながら貼付する。この際、注入時に注入材が漏れ出さないように、ひび割れとシールテープとの縁端は20mm以上確保する。ひび割れが曲がっている場合等で20mm以上確保できない場合は、シールテープを重ねて貼付する。貼付する際の長手方向の重ね長は50mm以上確保する。
(2)注入座金設置
シールテープ貼付後、注入座金の設置位置にマジック等で印を付け、カッターナイフ等でシールテープに切込みを入れる。切込みを入れた箇所が注入座金の中心となるように速硬型の接着剤で注入座金を固定し、硬化するまで1時間程度養生を行う。
(3)注入状況の確認,追加処置
注入開始後、注入口からひび割れに沿って注入材が充填されていく状況を目視で確認する。空気溜りによって注入が中断している場合は、シールテープにカッターナイフ等で新たに切込みを入れ、空気を抜きながら注入を続ける。ひび割れに注入材が充填されたことを確認し、シールテープで切込み部を閉塞する。なお、空気を抜いても注入材が充塡されない場合は、ひび割れが連続していないものとし、新たに注入座金を接着して注入を行う。
(4)シールテープ撤去
注入材の硬化後、注入器具を撤去し、シールテープを剥がす。シールテープは人力で容易に剥がせるため、ディスクサンダー等の工具は不要である。また、注入座金を残置したままでもシールテープを剥がすことが可能である。なお、シールテープ撤去後はコンクリート面に粘着剤が残留しないため、後処理も不要である。
5.おわりに
施工が容易で、工期の短縮が可能なひび割れ注入用のシールテープを開発した。シールテープは工期の短縮のみならず、注入状況が目視で確認可能なため、ひび割れ注入時の品質確保や補修後の耐久性の向上に寄与するものと期待される。
[参考文献]
- 1)コニシ株式会社:ボンドシリンダー工法 技術資料,2015.1