診療看護師から看護師へのエコーガイド下
血管穿刺手技教育の取り組みと症例紹介~カテリープラスエコーの使用経験~

愛知県名古屋市東区に位置する名古屋ハートセンターは、「世界最高水準の心臓病治療・患者様本位の優しい医療」の理念のもと、循環器専門病院として循環器に特化した先進的な医療を提供する施設です。診療科は循環器内科、心臓血管外科、内科、麻酔科、放射線科、リハビリテーション科からなり、循環器治療の最先端医療が導入されています。今回、同センター 心臓血管外科 小中野さんから、院内でのエコーガイド下血管穿刺手技の教育に関する取り組みと、カテリープラスエコーを使用したエコーガイド下血管穿刺のご経験について伺いました。

エコーガイド下血管穿刺の実施状況
エコーガイド下血管穿刺の実施状況

名古屋ハートセンター(以下、当院)の診療看護師(以下、NP)は循環器内科、心臓血管外科に所属して業務にあたっています。末梢静脈路確保が困難な症例、心臓血管外科手術前のサーフロー留置針(製造販売:テルモ株式会社)を用いた血管確保が必要な症例、および抗凝固薬使用による内出血・輸血投与路確保困難な症例に対しては、病棟看護師から各科所属のNPへエコーガイド下穿刺の実施について直接依頼があります。長期的に静脈路確保が必要な症例では、サーフロー留置針、マルチルーメン、PICC留置、および中心静脈カテーテルのデバイス選択を検討し、主治医へ相談報告のうえ実施にあたります。集中治療室では、中心静脈カテーテル留置患者さんが多く存在しますが、単独ルートからの薬剤投与などの目的で、血管径や血栓の有無などもエコー下にて評価した後に穿刺を実施しています。外来においても、造影CT撮影時の造影剤投与路確保困難症例に対して、外来看護師より実施の依頼があります。当院では1日平均5人、多い時は10人を超える症例にエコーガイド下血管穿刺を実施しています。循環器治療では、抗凝固薬や抗血小板薬を内服している患者さんが多く来院されるため、患者さんへの穿刺時疼痛の軽減、合併症の防止、および穿刺に係る業務時間の短縮を目指して、1度の確実な穿刺で処置を終えられるように努めています。

エコーガイド下血管穿刺手技の教育
エコーガイド下血管穿刺手技の教育

NPは大学院修士課程において、特定行為38行為21区分ならびに相対的行為をトレーニングしています。当院にNPが勤務するようになってから、看護師からの血管確保に関するNPへの相談件数は増加し続けており、静脈路確保困難症例についてはNPへ依頼することが通常となりました。このNPの業務量増加を受け、看護師もエコーを使用して静脈路確保ができる体制を作るため、エコーガイド下血管穿刺手技の教育を開始しました。現場教育に進む前に、NPが作成した教育資料(次項参照)を配布して、まずは手技の内容について理解してもらうことから始めるようにしています。 左手でエコーを把持しながら右手に穿刺針を持つことに慣れないため、不潔操作になることが多く、不安を感じながらトレーニングをしていた看護師が多かったように思います。カテリープラスエコーは正しい手順で貼付しなければならないので注意が必要ですが、不潔操作になることはありませんでした。看護師もエコーで血管の走行・深さ・血管径等を評価することで、静脈路確保の質が向上し、穿刺回数の低減による穿刺業務時間の削減、医療材料の削減、看護師の役割拡大へつながることを期待しています。

エコーガイド下血管穿刺手技の事前教育資料(抜粋)
エコーガイド下血管穿刺手技の事前教育資料(抜粋)

エコーガイド下血管穿刺手技の内容について理解できるように、エコーの概要、プローブの操作、血管の解剖、穿刺方法、全体の流れなどを解説した資料を作成しています。

エコーガイド下血管穿刺手技習得の目標
エコーガイド下血管穿刺手技習得の目標

知識と技術の両側面からエコーガイド下血管穿刺手技を考えることが重要です。

目標の立案
  • 医療の質への貢献のために、安全第一に手技を行うことができる
  • 血管エコーの概要や穿刺方法を理解することができる
  • 実臨床で血管エコーを用いた穿刺を行うことができる
  • エコーを使用する意図を理解し、活用できる
目標までの考え方
目標までの考え方
エコー機器の概要
エコー機器の概要

機種によって異なるエコー機器の特徴について解説しています。

プローブの特徴
プローブの持ち方
プローブの持ち方
エコー機器の使用方法
エコー機器の使用方法

血管穿刺を行う前の準備、血管を綺麗に描出するための基本的な方法、エコー機種ごとの使用方法を解説しています。

プローブ交換の方法
断層像の調整
断層像の調整
画像の見方・決まりごと
画像の見方・決まりごと
血管走行の考え方
血管走行の考え方

基本的な血管の解剖について解説し、血管走行の深さ、蛇行の有無、血管径、静脈の判別について確認します。

血管走行の確認
エコーガイド下穿刺手順
エコーガイド下穿刺手順
採血と留置針の作法
採血と留置針の作法
穿刺手技のポイント
穿刺手技のポイント
穿刺時の注意点
穿刺時の注意点

エコーに慣れていない患者さんが多いことを考慮し、患者さんへの声かけを忘れないよう指導しています。

穿刺時の風景
穿刺以外の活用方法
穿刺以外の活用方法
実際の流れ
実際の流れ

穿刺手技そのものも大切ですが、しっかりとした穿刺準備と計画性のある 対応も求められ、穿刺手技のみに捉われないことも重要です。

手技全体で重要なこと(私見)
  • 左手でエコー/右手で穿刺針を持ち穿刺をすることに慣れる
    ⇒左手と右手の協調運動ができていない
  • 穿刺の針先を見失う
    ⇒エコーが目標物をとらえられず見失う
  • サーフロー留置針であれば逆血確認したらエコーは不必要
    ⇒エコーは血管内に針先が穿刺したことを確認するもの
  • 幾度となく穿刺をされている場合は、中枢に向かって走査
  • 点滴漏れを確認する場合は、点滴を落としながらエコーにて間質を評価
  • 血管エコーにも限界がある
  • 血管径2mm以下は厳しい
  • 初回失敗した時の次の手立てを考えておく
カテリープラス™エコー使用症例
カテリープラス™エコー使用症例

症例1 冠動脈バイパス術後(58歳 男性)

造影CT検査時に使用が推奨される太いサーフロー留置針を用いた静脈路確保

冠動脈バイパス術後4日目に血流評価の目的により、造影CT検査を行いました。本症例の体重は89kgであり、造影剤の使用量が多く、18Gのサーフロー留置針の留置が必要でしたが、触知による血管選定が困難でした。穿刺回数を最小限にするため、エコーガイド下にて静脈路確保を行いました。

    1. 肘正中皮静脈を同定
    1. 穿刺直後の貼り付け
    1. 穿刺後の固定

症例2 僧帽弁閉鎖不全症に対する右開胸小切開手術前(80歳 女性) 

指定された場所への静脈路確保

本症例は全身麻酔による左側臥位・右手挙上で心臓手術が予定されていました。左手の橈骨動脈には観血的動脈圧測定による動脈ラインの留置を行うため、左手橈骨動脈周囲の血管確保は避ける必要がありました。また、麻酔導入時の薬剤投与等を考慮すると、20G以上のサーフロー留置針の留置が望ましく、手術前の血管外漏出を防ぐためにも、エコーガイド下にて橈側皮静脈路の確保を行いました。

    1. 橈側皮静脈を同定
    1. エコーガイド側を剥離
    1. 穿刺後の固定

症例3 心不全増悪に対する強心薬投与の静脈路確保(78歳 女性)

血管炎を防ぐための静脈路選択

本症例の患者さんは心不全増悪により救急車で来院しました。強心薬、血管拡張薬、利尿剤等が投与される予定でしたが、強心薬は血管外漏出による静脈炎や強い疼痛を伴うことがあり、末梢静脈からの投与は慎重に行うことが必要です。本症例は4度目の入院なので、薬剤投与予定期間の長期化を想定して末梢留置型中心静脈カテーテル留置を行うことになったため、エコーガイド下に穿刺位置を同定し、静脈路確保を行いました。

    1. 尺側正中皮静脈を同定
    1. エコーガイド下で穿刺
    1. 穿刺後の固定
名古屋ハートセンターでのNPの役割
名古屋ハートセンターでのNPの役割

NPは外来から入院・手術・退院・在宅支援まで広く横断的に活動をしています。循環器に特化した医療の中で、スタッフの手が足りない時なども、臨機応変に対応しています。NPの個人の役割だけではなく、病院組織全体として、患者さん、医療者に対して何ができるのかを考えながら、これからも医療チームの一員として従事していただきたいと思います。臨床だけでなく、看護の柱である、研究・管理・教育について取り組み、患者貢献・医療体制・病院利益など多くの課題の解決に向けて、これからもより良い製品を選択し、使用していきたいと思っています。

カテリープラス™エコーの導入前後の変化
カテリープラス™エコーの導入前後の変化

エコーガイド下血管穿刺でポイントとなるのは、清潔操作か、不潔操作かということです。カテリープラスエコー導入前の穿刺では、穿刺部位がどうしても不潔になることが多くありましたが、カテリープラスエコーを使用することで、エコー下でも清潔に安心して穿刺が可能になりました。カテリープラスエコーの使用によってエコー画像の描出不良になる不具合はありませんでした。エコーでプレスキャンをした後に消毒処置や腕を動かすなどで、穿刺部位が不明となった場合でも、カテリープラスエコーの使用で解決できた症例もあります。

看護師がエコーで血管評価する時代
看護師がエコーで血管評価する時代

看護師がエコーを聴診器のように使える環境はまだ整備されていません。医療の質向上や看護師の役割拡大が求められている中、看護師がフィジカルイグザミネーションなどに非侵襲的なエコーを活用することで、より多くの可視化された患者さんの情報が得られる可能性があります。患者さんへの疼痛の軽減、デバイス感染症の軽減、適したデバイス選択のために、エコーガイド下血管穿刺が普及することを望みます。エコー操作の教育法や教育者についての課題を克服するには、NPが特定看護師(特定行為研修やPICC関連受講の看護師など)へ、特定看護師から正看護師への教育体制の構築が重要だと考えています。将来的に、看護師がエコーを適正に使用することが通常となり、医療の質向上への貢献となることを期待しています。

Case data
開設年
2008年10月
所在地
〒461-0045 愛知県名古屋市東区砂田橋一丁目1番14号
病床数
64床
診療科目
循環器内科/心臓血管外科/内科
麻酔科/リハビリテーション科/放射線科

TM:trademark

製品紹介

カテリープラスエコー

カテリープラスのエコーガイド下穿刺用ドレッシング。

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