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PROJECT
STORY01

まっすぐ切れる
セロテープ®カッターの開発

OUTLINE

ニチバン株式会社は絆創膏、軟膏・硬膏類の製造・販売から始まり、絆創膏開発で蓄積してきた粘着技術をベースに、幅広い分野に「貼る」製品をお届けすることで、人々の快適で豊かな暮らしに貢献し続けてきた100年企業です。この100年の歴史の中で、戦後以降、お客様に愛され続けてきた製品がセロテープ®です。この新製品開発プロジェクトは2008年にセロテープ®が60周年の節目を迎えるにあたって、セロテープ®の進化した姿をお客様に見せる事ができる新製品を市場投入することを目的にスタートしました。

PROJECT MEMBER

  • 製品設計部

    2007年 入社

    化学生命工学部 化学物質工学科

EPISODE 01

プロジェクトの担当者は企画担当:入社2年、設計担当:新入社員とともに若手社員であり、プロジェクトの企画・人いずれもが本当の意味でゼロからのスタートとなりましたので何もかもが課題でしたが、最大の課題は『吸湿したセロテープ®への対応』でした。セロテープ®の進化した姿として『まっすぐきれること』を企画の中心に据えたため、セロテープ®の切り口がまっすぐでないと意味がありません。しかし、セロテープ®は社内で『生き物』と呼ばれるぐらい、使用環境(温度・湿度等)によって姿を変えていきます。実は高湿度条件下で保管した『吸湿したセロテープ®』は、常湿条件下で保管していたセロテープ®に比較して伸びる傾向が強く、テープカッターとの相性が下がってしまいます。開発段階でも耐久性試験等で指の皮が何度もめくれるぐらいセロテープ®のカット試験を行っていましたが、いずれも常湿に近い環境下で行っていました。そのために、梅雨等の湿度が高い時期を想定したセロテープ®での検証が行えておらず、発売初年度の梅雨時期にお客様にご迷惑をかける結果となりました。

 

EPISODE 02

苦労したことはたくさんありますが、印象深いのは『直線』とは何かを考えて、『直線』の定義を設けた事です。この製品を設計する上で最も重要視したのが、『テープの切れ味』と『直線性』の両立です。テープカッターにカッターナイフやハサミの様な刃物を採用すれば簡単にテープを直線にカットすることができます。しかし、お子様が使う可能性があるこの製品では安全第一として、この方法を避けて別の方法を採用しています。その方法が、テープカッターの刃先に細かな凹凸を設ける方法です。この方法は刃物を採用する事に比較すると大きく安全性に勝りますが、一方で凹凸の頻度や深さ(サイズ)を間違えて凹凸が深すぎるとテープが直線に切れなかったり、浅過ぎるとテープが切れにくかったりします。前述の『吸湿したセロテープ®への対応』するための方法として、カットしたテープが直線といえるギリギリまで刃先の凹凸を深くする方法を選びましたが、『直線』といっても、『直線』の定義は千差万別、人それぞれであるため、色々な凹凸のテープカットサンプルを作成してアンケートを取りました。その上で、社内的な直線の定義(例えば凹凸が最大で0.○○mm以内等)を設定し、その定義を目標に刃先形状試作を繰り返し行いました。

EPISODE 03

このプロジェクトで海外製造拠点への出張は大きな挑戦でした。これまでに何度か海外出張をしていますが、最初はこの製品に関連したものでした。ニチバンに海外の製造拠点がある事は入社前から知っていましたので、いずれは・・との思いはありましたが思いのほか早くその日がやってきました。プロジェクトがスタートしてから1年程度での出張でしたので、入社2年目だったと記憶しています。この製品の製造拠点は海外にあるため、試作や製造の立ち合いは海外出張が必要になります。それも一人です。学生時代に海外旅行の経験はありましたが、一人で飛行機に乗ることも、一人で海外に行くことも初めてでしたので非常に緊張しました。現地に日本人がいましたが、製造機のオペレーターや品質管理の方は現地の方でしたので、ジェスチャー、ペン・ノート、ホワイトボードをフル活用してコミュニケーションをとった事が思い出深いです。当時はちょっとだけ上司を恨みましたが、今思うと最高の経験でした。自分が当時の上司の立場なら、部下に『いってこい!』と言ってあげられるかどうか。当時の上司、先輩には感謝しかありません。

 

EPISODE 04

このプロジェクトで開発したまっすぐ切れるテープカッター『直線美TM』は卓上大巻タイプ(2009年~)でしたが、卓上小巻(2010年~)、ハンドカッター大巻(2011年~)、ハンドカッター小巻(2012年)、卓上ビジネスタイプ(2014年~)。セロテープ®小巻カッター付き<まっすぐ切れるタイプ>(2018年~)、セロテープ®小巻収納カッター付き<まっすぐ切れるタイプ>(2021年~)、ハンドカッター大巻<まっすぐ切れるタイプ>(2022年~)という風に現在に続くまで派生する製品がどんどん増えていっていることが最大の成果です。実際に私が担当した製品は卓上大巻タイプ(2009年~)だけでしたので、卓上大巻タイプで企画担当者が作り上げたコンセプトや設計担当が検討・蓄積した知見やが今も活きていることは非常にうれしく思います。 また、個人的な最大の成果ですがこのプロジェクトを一緒に進めていた企画担当者の方と、本件がきっかけで結婚しました。今年で結婚10周年になり、小学生の娘と家族3人で楽しい毎日を過ごしています。きっかけとなった製品の名前『直線美TM』をもじって、『直美』が娘の名前候補になっていた事はまだ秘密にしてあります。

 

EPISODE 05

プロジェクトは完了してしまっているのですが、このプロジェクトがきっかけになって様々な製品が生まれました。数十年後にニチバンの、セロテープ®の歴史を振り返った際に、この製品の名前が挙がってくれると非常にうれしいです。