社長メッセージ

社長メッセージ

ニチバングループにかかわるすべての人々に貢献するために、歩んでいきます。

今回の統合報告書は初めての発行となりますがその目的や狙いなどをお聞かせください。

これまでも上場会社として情報開示に取り組んできましたが、財務情報だけでなく、ニチバングループの特徴や方向性、サステナビリティへの取り組みといった非財務情報の充実を図るとともに、ステークホルダーの皆様に読んでいただけるようなツールをつくりたいというのが一番の目的です。
お蔭様で「ニチバン」という社名はもちろん、「セロテープ®」や「ケアリーヴ」「ロイヒつぼ膏」などの製品名は一定の知名度があると認識していますが、企業としてどのような特徴があり、何を目指しているのかといったところは十分にお伝えできていないのではないかと感じることがありました。私どもを理解していただくためには、やはり主体的にアピールをしていくことが必要だと判断しました。特に「将来どうなりたいから、今これをしている」といった物ごとのつながりが大事だと思っていますので、それを社内外に発信することで当グループに対する理解が進むものと期待しています。また、発信するだけでなく、ステークホルダーの皆様からさまざまなご意見をお聞かせいただくためのコミュニケーションツールとしても活用を図っていきたいと思っています。

価値創造の仕組みについて 特徴や強みとともにご説明ください。

当グループの強みは、創業から100年以上にわたり蓄積してきた独自の粘着技術にあります。そのコア技術を活用してテープ分野やメディカル分野で幅広く製品を展開し、さまざまな課題解決を通じて安定した収益や社会貢献を実現していくことが、当グループの価値創造プロセスと言えます。特に「セロテープ®」に代表されるように天然素材であることによる環境負荷低減をはじめ、メディカル分野における「皮膚に貼る」シーンでは「かぶれない」や「通気性があって蒸れない」などの人肌に合った機能に特徴があり、こういった点が差別化要因となっています。また、工業用途についても各用途が多岐にわたるためさまざまな特性が求められますが、それぞれに対応するような粘着技術や支持体のバリエーションにより高い評価をいただいています。更には、長い間信頼関係を築いてきた調達先との関係や強固な顧客基盤についても強みと言えるでしょう。当グループでは、製品品質と同様、企業品質についても強いこだわりがあります。「信頼」という100年以上続いた企業品質をこれからも守っていくことこそが、価値創造の根幹になるものと考えています。

社長就任の2019 年に中期経営計画とともに 中長期ビジョンを公表されました。その背景について教えてください。

当グループは2018年に100周年を迎えましたが、私が社長に就任した2019年は、ちょうど次の100年に向けた中期経営計画をスタートさせる節目にありました。社長就任前の私がリーダーとして中期経営計画の策定にもかかわっており、次の中期経営計画を策定するにあたって、まずは「どこに向かう5年間なのか」を明確にすべきではないかという考えに至りました。その上で、将来的にありたい姿と今後5年間でやるべきことのつながりを示す必要があるということから、中長期ビジョン実現のための中期経営計画という位置づけで発表しました。
中長期ビジョン『NICHIBAN GROUP 2030 VISION』については、当グループが2030年(策定時点から12年後)にはどうなっていたいのか、どうあるべきかという議論から開始しました。国内市場が成熟していくなかで、持続的な成長を目指すためには、グローバルに貢献できるメーカーになっていたいということ、更にはメーカーであるかぎり新しい価値や技術をしっかりと生み続けていきたいという想いから、「快適な生活を支える価値を創出し続け、グローバルに貢献する企業へ」というスローガンを掲げ、新製品比率30%、海外比率30%という明確な方向性を打ち出しました。当初は「誰がどうやって」といった消極的な意見もありましたが、今ではビジョンの共有や浸透を図ってきたことで、少しずつではありますが社員一人ひとりが自分ごと化して仕事に向き合う意識が醸成されてきたのではないかと実感しています。
現在推進中の中期経営計画【ISHIZUE 2023~ SHINKA・変革~】は、まさに2030年に向けてステップアップするための基礎をつくることが最大のテーマであり、「イノベーション創出」「グローバル展開・拡大」「事業推進体制見直しと収益改革」「AI・IoT の積極活用」「人財育成」といった5つの重点テーマに取り組んでいます。特に「イノベーション創出」と「グローバル展開・拡大」は、中長期ビジョンの実現に直結するもので、今後の成長エンジンとして位置づけています。また、不採算部門の集約などによる収益改革に加え、これまでの「メディカル」(人に貼るもの)と「テープ」(物に貼るもの)といった事業セグメントの切り分けだけではなく、お客様を基軸とした事業活動を強化するために、よりお客様に密着した営業活動を推進し、新開発案件探索や顧客拡大に取り組んでいます。すなわち、メディカル製品といっても一般消費者向けのヘルスケア製品(BtoC)と病院向けの医療材製品(BtoB)があり、テープ製品についても同様です。それぞれのお客様の声を聞き、お困りごとを解決するという当グループの想いと行動を価値につなげていくために、このような顧客を基軸とした事業推進体制の見直しを行いました。更には、これらの活動を支えるためのIT 投資や人財育成にも積極的に取り組んでいます。

ニチバングループにかかわるすべての人々に貢献するために、歩んでいきます。

中期経営計画は最終年度を迎えていますが これまでの振り返りをお願いします。

スタートから4年が経過しましたが、策定時点では想定していなかったコロナ禍の影響に加え、最近ではサプライチェーンの混乱や急激な原材料・エネルギー価格高騰の影響も受けて、取り巻く環境は厳しい状況が続いています。一方、各重点テーマの進捗については、コロナ禍に伴う活動制限などの影響もあり十分な動きができなかったところもありましたが、全体としては将来に向けた基礎づくりという点において着実な前進を図ることができたと考えています。
今後の成長エンジンのひとつである「イノベーション創出」については、まだまだ新事業の立ち上げという段階には至っていませんが、当グループのコアとなる粘着技術をいかに活用していくかという点においては、さまざまな動きが出てきました。特に病院向けや工業用途などのBtoBについては、事業推進体制の見直し効果もあり、直接お客様の声を聞きながら、どのような活用ができるのか、どこに需要があるのかを探索し、新たな提案を行う開発体制ができてきたと感じています。また、オープンイノベーションという点では、外部のスタートアップ企業を含め、当グループの持つ技術をオープンにした上で、こんな活用ができるのではないかといったアイデアを募り、コラボレーションできそうなパートナーを見つけ出す活動にも取り組んでいます。われわれが気付いていない使い方や必要とされる機能について、今までのように「自前主義」ではなくパートナーとの「共創」という考え方が重要になっています。次の中期経営計画では、これまでの活動を新しい価値の創出という形に結び付けていきたいと考えています。
もうひとつの成長エンジンである「グローバル展開・拡大」については、2020年10月にドイツのデュッセルドルフに販売子会社を設立し、日本、タイ、ドイツの3拠点により東アジア、 東南アジア、オセアニア、欧州をカバーする体制ができあがりました。欧州は難しい市場ではありますが、現地のお客様に直接アプローチし、市場の声を聞きながら開拓を推進できるようになった点は、今後の製品開発においても大きな期待が持てます。目標とする海外比率についても、ネガティブな外部要因が続くなかで着実に数字を積み上げており、タイやドイツの販売子会社ではすでに黒字化を達成することができました。ただ、コロナ禍による活動制限等の影響もあり、更なる拡大に向けての体制づくりはまだ十分とは言えず、生産や物流を含めた拠点を増やす必要があります。そのためのM&A は重要な戦略として今後も検討を重ねていきます。
他にも、基幹システムの導入による生産性の向上や「職場エンゲージメント向上プロジェクト」を活用した人財マネジメント、脱溶剤化に向けた環境投資といった面でもひとつひとつ着実な成果を実感できるようになってきました。

コーポレート・ガバナンス体制の特徴や 実効性についてお聞かせください。

取締役会は取締役8名のうち社外取締役が4名を占めるとともに、2021年3月には「指名・報酬委員会」を設置するなど、独立性や透明性を確保してきました。私は監督される立場にありますが、例えばM&Aなどの投資案件についても、具体的な判断の根拠や裏付けなどを含め、さまざまな観点からご意見やご質問、各々の経験などを踏まえたご助言などをいただき、十分な審議ができているのではないかと認識しています。社外取締役の方からはよく「大胆かつ慎重に」といったアドバイスを頂戴しますが、この表現がまさに言い得て妙であり、攻めと守りの両面からガバナンスが効いていると感じています。また、アンケートなどによる取締役会の実効性評価はもちろん、執行役員を含めた多面評価も実施しており、常に課題の把握や役員それぞれが自らを省みることができる仕組みも導入しています。
取締役会では、経営方針全般やリスクマネジメントについての報告や議論をしていますが、気候変動対策や社会課題の解決を含め、当グループ自身の持続的な成長に向けたサステナビリティの取り組みについても重要なテーマとなっています。特に、先ほど申し上げた「企業品質」をいかに守るかは取締役会のトップイシューです。また、前期から女性の社外取締役を迎え入れたこともあって、女性活躍に向けた取り組みや人財育成、職場における安全対策などについても、率直なご指摘やご意見をいただいており、われわれの活動や事業基盤をしっかりと支えていただいています。

ニチバングループにかかわるすべての人々に貢献するために、歩んでいきます。

今後の事業環境の変化を踏まえた リスク要因や成長機会を どのように認識していますか?

国内市場の成熟化、労働人口の減少や地政学的な緊張はもちろんのこと、生産活動において資源を消費する当グループにとって、環境対策などへの遅れもリスク要因です。直近では、原材料・エネルギー価格の高騰やサプライチェーンの混乱などが業績に大きく影響を及ぼしました。また当グループはナフサから製造される原材料も使用していますので、環境対策に伴う原材料の減産によるコスト上昇、あるいは原材料の供給が滞るなどの調達リスクは、構造的な課題として捉える必要があります。更には、お客様に製品をお届けする上での物流問題についても備えるべき課題となってきました。そういった調達リスクや物流リスクについては、サプライチェーン本部を設置して、調達先や物流会社とのコミュニケーションをより強化し連携を深めることにより対応してまいります。
続いて、成長機会については、現在「ケアリーヴ」や「ロイヒつぼ膏」といったメディカル製品が収益源となっていますが、私が携わってきた工業用途製品についても、モビリティ分野における自動運転や軽量化などいろいろな課題を抱えるなかで、当グループのコア技術を活用できる範囲が広がっていく可能性があると考えています。更にこれまで開拓してこなかった領域、例えば土木における「インフラの老朽化対応」のような社会課題の解決に向けても、学会などさまざまなルートを通じて可能性を探っていきたいと考えています。一方、医薬品についても経済成長の著しい新興国への展開は大きな成長機会です。生活水準が上がるにつれ、より品質や機能性の高い製品が選ばれることになり、当グループのコア技術や品質へのこだわりが大きなアドバンテージになる時代が必ず来るでしょう。国内に話を戻しても、超高齢社会の到来は医療材製品にとってはチャンスでもあります。例えば「在宅医療・介護」において「病院で使っているものを家庭でも使いたい」という需要が生まれています。当グループの場合、病院で使われる製品とドラッグストアで扱う製品と両方の販路を持っていることが強みとなると考えていますし、日本は他国よりも先に高齢社会を経験することになるので、ここでしっかり対応できればモデルケースとして海外へも展開していけるのではないかと先を見据えています。

最後にステークホルダーの皆様への メッセージをお願いします。

当グループは2018年に100周年を迎えました。次の100年に向けて、基本理念を「私たちは絆を大切にニチバングループにかかわるすべての人々の幸せを実現します」にリニューアルし、社員一丸となって快適な生活を支える価値を創出し続ける会社を目指しています。その実現のためには、使っていただいているお客様はもちろん、ステークホルダーの皆様からのさまざまな声が大きな推進力となります。ぜひ、忌憚のないご意見をお聞かせいただくとともに、これからも末永くご支援をよろしくお願いします。

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